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手描きだからこそ伝わる「メッセージ」がある-
手描きだからこそ伝わる「メッセージ」がある-

店舗を飾るサインディスプレイの世界で、チョークグラフィックという表現手法を確立したチョークボーイさん。この仕事を始めたきっかけや、家庭でチョークグラフィックを楽しむ際のアドバイス、そしてこれからの目標など、お話を伺いました。

プロフィール

チョークボーイ(チョークグラフィックアーティスト)

大阪市立工芸高等学校ビジュアルデザイン科へ進学後、アルバイト先のカフェで描いていたメニューボードが人気を呼び、“チョークボーイ”としての活動を始める。その作風は、2015年に開催した個展をきっかけとして全国へ知れ渡り、飲料メーカーのイメージビジュアルなどにも採用。2017年には手描きアーティストの祭典「HAND-WRITTEN SHOWCASE」を主催し、その活動領域を海外へ広げようとしている。

アルバイトからプロへ―

――まずは、チョークグラフィックを始められたきっかけを教えてください。

きっかけは、大阪・梅田のカフェ「カフェアンドブックス ビブリオテーク」でのアルバイトでした。シフトの中に“黒板メニューの書き換え”という作業が組み込まれていたんです。その後に休憩時間があり、僕としては、その書き換えの時間もサボる時間にしたくて、ダラダラと描いていたんですが、さすがに怒られてしまいまして…。だったら、しっかり時間をかけただけの作品を生み出してみようと。それから僕が作った黒板メニューがお客さんの間でも評判になって、そのうちカフェの運営会社の社長にも認められるようになり、地方の店舗へもアルバイトの身で出張するようにもなりました。それが、僕のチョークグラフィックアーティストとしての活動の始まりです。

――もともと美術系の勉強はなさっていたのですか?

たまたまですが、大阪市立工芸高等学校ビジュアルデザイン科の出身です。小さな頃から“イラスト”や“文字”が好きで、お小遣いをためて、サイケデリックなデザインのポスター集を買うような子供でした。文字がぎっしりウネウネ並んでいて、「こんなのがあるんだ、カッコイイ!」って。そんな姿から中学校の担任であった美術の先生が「お前に向いている」と薦められたのが同高校でした。

――今までで、一番印象に残っているお仕事はありますか?

いろいろありますが…自分の環境を大きく変えたターニングポイントとしてなら、いただいた仕事ではありませんが、2015年に原宿で開いた個展です。壁に黒板を作り、毎日板書内容を書き換えるという作品の見せ方が話題になって、Instagramのフォロワー数も元々800人くらいだったのが3000人くらいに増えました。また、この個展やワークショップをきっかけに出版の話も来たりして、その本を通じても、より多くの人たちに僕のことやチョークグラフィックというものを知ってもらえるようになりましたね。

生活の中にあるチョークグラフィックとは―

――「カフェ看板」というイメージの強いチョークグラフィック、家庭でインテリアとして取り入れるとしたら、どのように生活の中になじませればいいのでしょうか?

僕はチョークグラフィックを「メッセージに付加価値を添えて伝えるもの」だと思っています。一定の訴求をしないとただの模様が付いた板になってしまうし、あるレベルを超えると、とてもうるさく見えてしまい、インテリアとしての雰囲気も壊してしまうかもしれません。その絶妙な“スイートスポット”を、空間、テーマ、客層などによって探っていくことが大事だと考えています。例えば「コーヒー500円」というメッセージを伝えたいとしますよね。そのまま書くだけでは板書の域を出ません。コミュニケーションとしても一方通行でしょう。しかしチョークグラフィックなら、リラックスできる雰囲気を織り込んだり、豆へのこだわりをアピールしたり、読み手の想像力を働かせることができます。そんなニュアンスのチョークグラフィックを家庭内のインテリアとして取り入れられたらいいかなと思います。

――そう考えると、一般の方には難しいイメージですが、家庭でもできそうなチョークグラフィックがあればアドバイスをお願いします。

まず、まねから始めるのが入りやすいのではないでしょうか。僕も描き始めた頃は、ワインや缶ビールのラベルなどを模写していました。面白いなと思ったデザインを見つけて、まずはまねして描いてみて、そこから大きさを変えてみたり、文字の部分だけ自分のメッセージに変えてみてもいいですよね。参考にするのは、お店で見るようなチョークグラフィックに限らず、普通の絵や写真でもいいと思います。例えば、家庭で伝言板の用途としてチョークグラフィックを取り入れるなら、缶ビールの絵を描いておいて、商品名のところに「お仕事、お疲れさま」とかね。見た人に「冷蔵庫に冷えたビールが用意されているな」というイメージが伝わりそうです。
チョークグラフィックって、鉛筆とかで絵を描くより全然描きづらいんですよ。でも手描きのアナログ感がすごく強調され、描く人の癖が出たりして面白いんです。その癖を生かして描いたものが、いかに相手に“かわいい”“かっこいい”“きれい”などのポジティブな印象を受け取ってもらえるか、その点に気を付けながら描いてみるといいかもしれませんね。

自らの原点、「こんなのがあるんだ、カッコイイ」の共有

――休日の過ごし方を教えてください。

休日はあまりないんですが、丸1日仕事をしない日があるとしたら、そのときは子供と思いっきり遊んでいます。まだ2歳半なので、部屋の中で遊ぶことが多いです。共同作品みたいなものは作ったりできませんが、一緒にお絵描きはしますよ。実は、そんなときでも頭のどこかで「あれ描きたいな…」と仕事のことを考えてしまったりするんですが(笑)

――ご自宅にもご自身の作品を飾られていますか?

ちょうど引っ越ししたばかりなので、今は何も置いていません。いずれは飾ったりしたいですね。最近では、ごみ箱のふたにレタリングしたかな。分別する中身と出す曜日を描きました。とても作品とは言えませんけど(笑)。

――活動を通じて一番伝えたい思い、夢や目標があれば教えてください。

以前、“手描き”のよさをもっと多くの人に知っていただきたいという思いから、書家、レタリングデザイナー、イラストレーターなど、僕を含めて“手描き”にこだわった国内外のアーティスト18人が、自身の作品を持ち寄った「ハンドリトゥン ショーケース(HAND-WRITTEN SHOWCASE)」というイベントを主催しました。そのイベントを開催することが今までの“夢”でしたが、次はこれをずっと続けていこうということが僕の“使命”だと思っています。
こうした活動を通じて、僕のInstagramを訪れてくれた方の中には、“手描き”などの属性タグを追って、他のアーティストもフォローしてくれるファンもいるようです。「文字って面白いな」「こんなにバリエーションがあるのか」。そうした共感の動きがあることを知ると、本当にうれしい限りです。

取材・撮影協力

「なぎさ橋珈琲 逗子店」
神奈川県逗子市桜山9-1-10

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