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環境をつくる住まい

時代が変われば、住まいも変わる。
これまでも住まいのカタチは、暮らす人のライフスタイルに合わせて変遷してきました。少子高齢化や空き家など住まいにまつわる課題も見えています。「環境をつくる住まい」では、これからの住まいの環境づくりを、気鋭の建築家などの作品や活動を通して読み解いていきます。

Vol.4 馬場未織/南房総リパブリック
地域の魅力発信で、未来に里山つなぐ

01里山環境を守る仲間たち

南房総リパブリック。千葉県の南房総市を拠点に、自然学校を開催したり、地域の農産物の魅力を伝えたり、さまざまな視点で南房総の魅力を発信し、里山保全活動をしているNPOです。東京と南房総の二地域居住を実践する馬場未織さんが、豊かな田舎暮らしを支えてくれる地域へ恩返しをしたいと、仲間と設立。その活動と、二地域居住実現への道のりを3回シリーズでお伝えします。

馬場未織/南房総リパブリック

馬場未織(Miori Baba)

1973年東京生まれ。日本女子大学住居学科修了後、建築設計事務所を経て建築ライターに。2007年から、家族5人とネコ2匹で東京都世田谷区と千葉県南房総市の二地域居住を開始。南房総の農家や、友人と共にNP0法人南房総リパブリックを設立し、地域創生となる活動を展開中。同法人理事長、著書に『週末は田舎暮らし』。

里山を未来につなぐ

東京・世田谷と千葉・南房総市の中山間地に二地域居住する馬場未織さん。南房総の築約100年の自邸にて(撮影:稲継泰介)

——南房総リパブリック設立の経緯をお聞かせください。

馬場2007年から、家族で東京と千葉県・南房総の二地域居住をしています。週末毎に中山間地にある週末住宅に通い、地元の農家さんから慣れない草刈りなどの手ほどきをしていただく暮らしを続けていました。

そうするうちに、南房総の魅力を、外からの視線ではなく、内側から伝えていけないかと思うようになりました。友人や知人をお客さんとして招くだけはなく、一緒に南房総の里山のことを考えてくれる仲間をどうやってつくっていくか……悶々と考えはじめるようになりました。二地域居住という半端者でも、農業や自然の豊かさを教えてくれた南房総に何か恩返しのようなことができないものかと。

里山地域は、人口減少、農家の高齢化や跡継ぎ問題、耕作放棄地の増大などの課題があり、地域の将来を考えると、地域運営を継続していく厳しさがあると感じていました。いっぽうで「子育て中の田舎暮らし」を求める若い世代も少なくありません。実は、このふたつのことが、うまく相互補完できるのではないかと思うようになったんです。

まだ活動の内容はぼんやりとしたものでしたが、そんな思いを友人たちに語っていると、「行ってみたい! 一緒にやろう」と言ってくれる人たちが現れ、そのポジティブさ(笑)がとても心強く、助けていただきました。そして2011年に、里山保全・里山活用のNPO法人として団体を設立します。

——どのようなメンバー構成で、どんな活動をしているのでしょうか。

馬場南房総で私たちに農業指導をしてくださっている農家さん、建築家やランドスケープ・デザイナー、ウエブ・デザイナー、教育関係者などさまざまな職種の方たち16人で立ち上げました。仕事はさまざまですが、誰かが喜んでくれる活動をするのが好きというのが共通項だと思います。

活動理念は、「人間を含めた生きものの営みがひとつながりで循環している里山環境の豊かさを未来に残すことを目指し、また南房総の里山と都市に暮らす人々とをつなげることを目指す」と掲げています。

NPO法人南房総リパブリックのメンバー
(左上から) 田中洋一、佐々木龍郎、内山章、高野菜美、本田美津子、大西瞳、(左下から)山本健太郎、馬場未織、和田夏子、木戸扶紀子、(壁面額縁)本間真理、本間秀和、(窓面写真左から)西田一郎、柳原博史、(左下パソコン画面)山代悟、(右下写真)西澤高男(写真提供:南房総リパブリック)

人気プログラム里山学校開催へ

——具体的な活動内容を教えてください。

馬場いちばん最初は、自然体験の里山学校を開催することでした。都市部から、「里山? 行ってみたい!」という流れを生み出すためのコンテンツです。きっかけは房総のわが家から車で10分のところにある「南房総ほんまる農園」さんのブログと、筆者の本間秀和さんとの出会いでした。ブログの面白さに魅了され、生きものが好きな息子のために話を聞きたいと、お願いをしたところ、唐突な依頼にも関わらず快く応じてくださり、お目にかかったのが初対面でした。

幼い息子が、シジミチョウについていきなり質問をしても、即答する本間さんのお話の内容は適確で面白いものでした。息子だけがこんないい話を聞くのはもったいない! と思いました。

自然体験は、親では子どもを指導しきれない部分が多いので、本間さんに教わる自然の素晴らしさを「もっと多くの人と共有したい!」と長い間思っていました。実は本間さん、大学で植物生態学を修めた専門家だったんですね。

NPOの理事になっていただき、南房総市からNPOに助成金をいただいて、それを原資に本間さんが講師を務める里山学校のプログラムを立ち上げました。山や川、田んぼや畑に入って行き、そこにいる生きものを観察する、ちょっとした探検。子どもだけでなく、大人も楽しめるような深い内容です。今では30回を超える人気プログラムになりました。

生きものに詳しいNPO理事の本間秀和さんを講師とする里山学校(写真提供:南房総リパブリック)

美味しいを発信する仕組みづくり

——南房総の農産物などを美味しく食べる、食のプログラムもありますね。

馬場最初、南房総からの直送野菜をつかった料理やお菓子を提供する、日替わりオーナーによるコミュニティ・カフェ「洗足カフェ」を目黒区で3年ほど運営していました。NPOの直営は2014年まで続けました。

最近は、南房総にいろいろな人が足を運んでくださるような「MEETS南房総」というイベントを始めました。農業と直に触れて、その食材を贅沢に食べるというツアーです。美味しいもの好きのNPOのメンバーが中心になって企画しています。

これまでは野菜の農家さんのところに伺って、レクチャーしてもらい、その農家さんの食材を使った料理を、素敵な場所で食べるということをやっていました。

今年は、廃校を利用して宿泊もする1泊2日のプログラムを行いました。初日は、酪農家を尋ね、その後、廃校になった「へぐり小学校(旧・平群小学校)」の校庭でマルシェや焚火バーを楽しみます。翌日は、朝ヨガをして、料理家につくっていただいたスペシャル朝ご飯をいただくというもの。

NPOの活動を続けていて感じるのは、やってみないと出会えなかった人に出会える歓びがあるということ。これまで房総に興味をもつことがない人が、訪れてくれる動きになってきたと思います。こうなると責任が伴ってきますから、あとは頑張るしかない!

自然や食を楽しみながら、場づくりという建築的な手法で地域の課題に対する新しいソリューションを考えるNPOの活動は、前例やノウハウがあるわけではありません。未知のゾーンに入っていくとき、常に場づくりに前向きな仲間たちがいる。それは表現しきれないほど心強く感じています。

——「旧・平群小学校」など、空き物件活用の活動については、3回目に詳しくご紹介します。次回は、馬場さんが魅了されていった南房総の可能性についてお伝えします。

地元農家のレクチャーを受け、その食材を使った食事を提供するイベント「MEETS 南房総」。2018年9月には、廃校となった「へぐり小学校」に宿泊し、朝食を提供(写真提供:南房総リパブリック)

「MEETS 南房総」でこれまでに提供した里山ごはん。有機野菜をふんだんに使う(写真提供:南房総リパブリック)

Vol.4 馬場未織/南房総リパブリック「地域の魅力発信で、未来に里山つなぐ」全3回

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