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環境をつくる住まい

時代が変われば、住まいも変わる。
これまでも住まいのカタチは、暮らす人のライフスタイルに合わせて変遷してきました。少子高齢化や空き家など住まいにまつわる課題も見えています。「環境をつくる住まい」では、これからの住まいの環境づくりを、気鋭の建築家の作品を通して読み解いていきます。

Vol.2 西田司/オンデザインパートナーズ
まちのリビングをつくる

01暮らしの豊かさを共有するアパート

横浜市・西区の住宅街にある「ヨコハマアパートメント」は、まちに開かれた広場がある木造の集合住宅です。天井の高い広場にはキッチンがあり、住人だけではなく、地域の人もさまざまなイベントに利用しています。空間と仕組みづくりについて設計者であり、運営も行うオンデザインパートナーズの西田司さんに伺いました。

西田司/オンデザインパートナーズ

西田司(OSAMU NISHIDA)

1976年神奈川県生まれ/1999年横浜国立大学卒業、同年スピードスタジオ設立/2002〜07年東京都立大大学院助手/2004年オンデザインパートナーズ設立/首都大学東京研究員、横浜国立大学大学院(Y-GSA)助手など歴任

西田司/オンデザインパートナーズHP: http://www.ondesign.co.jp/
(撮影:稲継泰介)

地域の広場をもつアパート

ヨコハマアパートメント(設計:西田司+中川エリカ/オンデザインパートナーズ、撮影:鳥村鋼一)

——ヨコハマアパートメントの共用広場は、だれでも自由に出入りできる集合住宅です。なぜそのようなアパートを発想したのですか?

西田敷地は横浜中心地から2kmくらいのところにあり、周辺は賃貸マンションや木造の賃貸アパートが多いエリアです。周辺地域の住人は30〜40年くらい入れ替わりがなく、新陳代謝の少ないまちでした。

近くに住むクライアントは、この場所に若い人が住み、文化的な活動が起こる場を賃貸住宅で実現したいと考えていました。まちの中にそういう場所をつくることで、自分たちもその効果を享受し、楽しみたいという希望があったようです。

背景のひとつとして、横浜市の創造都市施策がありました。アーティストやクリエイターの活動助成の一環として、市内に事務所を構えると補助がでる仕組みがあるんです。ただ、彼らの住まいとしてふさわしい住宅は不足していました。そこで、住まいながらアート制作や文化的な活動を行う場所のニーズがあるのではないかと考え、若いクリエイターが住む賃貸集合住宅を考えました。

敷地の広さから延べ床面積は150m2くらい、家賃から計算して4戸のアパートを入れることが適切だろうということになりました。ただ単純に4戸で面積を割ると、38m2程度です。それでは住居兼スタジオとしては狭い。そこで設計者として提案したのは、住宅としての占有部は極力小さくし、みんなから少しずつ出し合った面積を広い共用部にする方法でした。占有部は20m2くらいに抑え、残りの18m2×4で、約70m2の共用部を作り出しました。そこに各部屋が管理できる収納と、共用のトイレ、共用のキッチン、共用の冷蔵庫が入った収納庫を用意しています。

ヨコハマアパートメントの1階は周囲にむけて日常的に開放されている(撮影:稲継泰介)

ヨコハマアパートメント 平面図(図提供:オンデザインパートナーズ)
※図面を拡大してご覧になりたい場合はこちらをクリック(別ウィンドウで開きます)

住民や地域の人が集う共用広場

——共用広場はどのように使われているのですか。

西田共用広場は、自分の空間であると同時に、みんなの空間であると位置づけています。自分の部屋は20m2でも、共用部が70m2あると、90m2分の自由度が生まれます。70m2あれば友達を呼んでワイワイとパーティをすることもできるし、文化的な活動にも使えます。実際にアート作品の制作、パフォーマンス、ときにはBBQなどに利用しています。

敷地が谷地なので、広場が暗くならないように天井高さを5mとかなり高くしているので周辺から見ても開放的です。2階の専有部は天井高を抑えつつも、高い位置にあるので日当たりのよい環境を手にすることができる構成にしています。2階の占有部への階段は、住戸ごとにあり、自分の部屋から出ると小径のような専用の階段を通って共用部に行くことになります。

2016年に開催された「世界一難しい流しそうめんをつくろう! 食べよう!」の風景(写真提供:オンデザインパートナーズ)

2018年正月に行われた入居者たちによる書き初め(写真提供:オンデザインパートナーズ)

ルールづくりは住民みんなでアップデート

——共用空間の運営は、オンデザインが行っているそうですね。どのようにしているのでしょうか?

西田僕たちオンデザインが運営をしているといっても、ルールを決めるのは入居者自身です。設計の途中段階から、共用部のルールは住み手任せにしようと決め、「自分たちでルールをつくるのがルール!」という環境を用意しました。基本的には月に一度4組の入居者連絡会議を開催し、クライアントさんと、オンデザインのスタッフもそこに参加し、イベントを開催する日程とか、もう少しキッチンをきれいに使いましょうとか、そういう話をします。

なぜそういう仕組みにしたかというと、住み手が変われば空間の使い方が変化することが大事だと思っているからです。たとえば花好きの住人がいたら共用部に鉢植えを飾ったり、お料理好きの人がちょっと多めに作った食事をみんなに振る舞うなど。生活の中で、ある人にとっては当たり前のことでも、他の人には意外だけどちょっと嬉しいみたいなことってありますよね。住み手の力を空間に引っ張り上げるためには、自分ゴト化するのがいちばんよいだろうと考えているんです。

一緒にルールをつくれば、人から与えられた空間状況ではなく、自分ゴトになりますから。竣工から10年近く経ち、住人も3、4回入れ替わり、ルールが書き換えられアップデートされ続けています。皆、自分に都合がよいように書き換えますが(笑)、そういう風にお互いに話あって決めることで、アパート内のコモンセンス(共通認識)が発生します。お互いに顔がよく見える4組という数がとてもいいですね。

個室が20m2で、一生住むタイプのアパートメントではないと思っています。だいたい1人か2人で住んでいて、男女比もほぼ同じくらい。大企業に勤務している人、個人事業主の人、演劇をやっている人など多様な人たちが住んでいて、まさに社会の縮図のような場所。いろいろな人が共存して、アイデアを出し合っている感じがいいなと。共有部の価値は、住み手によって高めることができるんだなと、僕自身も1年間住んでみて学びました。

——広場のような共用部は、住民だけではなく、イベントなどで地域にも開放し、まちのリビングのような役割を果たしています。次回は、まちの人が趣味などを共有する場づくりについて伺います。

Vol.2 西田司/オンデザインパートナーズ「まちのリビングをつくる」全3回

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