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“歌舞伎“をもっと身近に!もっと気軽に!

歌舞伎は日本の“伝統芸能“、なんて聞くと近寄りがたく感じてしまいますよね。
でも歌舞伎はもともと庶民の中から生まれた娯楽なのです。

戦国時代が終わって徳川の世。戦(いくさ)がなくなり、庶民の生活にも余裕が生まれます。そんな中から生まれた歌舞伎は、庶民が庶民のために奏でたポップスやロックに近いものとも言えます。ですから歌舞伎を堅苦しく思う必要はありません。
最近はフィギュアスケートやコミックなどともコラボレーションしています。その時代の文化を貪欲に取り入れながら、守るべきところは守ってきたからこそ、今も歌舞伎は私たちの娯楽として存続し続けているのですね。

今までちょっと遠い存在に思っていた歌舞伎の世界。楽しみ方を知って、飛び込んでみませんか?

初めてでも心配なし!歌舞伎を楽しもう

今回は、初めてでも誰でも楽しめるように、歌舞伎の“大向こう”として年間100日以上も劇場に通う堀越一寿さんに、初心者の思う“歌舞伎のハテナ”を伺いました。

堀越一寿さん

早稲田大学卒業後、会社勤務の一方、足繁く歌舞伎鑑賞に通う。27歳の時、史上最年少で「歌舞伎大向弥生会」へ入会を許され、その後、故・十八代目中村勘三郎に『いま一番信頼できる大向こう』と認められる。現在はFacebookグループ「カブキスト」を運営し、歌舞伎を見てみたい、もっと楽しみたいという方々のための入門講座などを開催している。

「大向こう」ってなに?

歌舞伎の公演を盛り上げるために、「成田屋!」「中村屋!」などと客席から声をかける人のことを『大向こう(おおむこう)』と言います。今でいうアイドルへの“コール”のようなものでしょうか。元々は、贔屓の役者さんに向かっておのおの好き勝手に声をかけていたものが、段々洗練されて「演出の一つ」のようになっていきました。料理に例えるなら、完成した品に一振りすることで、味が引き立つ言わば“薬味”“スパイス”のようなもの。
誰でも声をかけることは出来ますが、誰でも「うまく」できるかと言えば、そうではありません。然るべきタイミングで声を掛けなければ、芝居の間(ま)にも影響を与えてしまいます。まずは、ベテランの大向こうさんが、どんな風に声を掛けているのか観察してみましょう。

  • 「幕見席」とは?

    そもそも歌舞伎の座席は、桟敷席、一等席、二等席、三等席、幕見席と分かれています。一等~三等席の順に値段が安くなり、舞台からも遠くなりますが舞台全体を眺めたいとか、役者さんの表情を良く見たい、などお好みで選ぶとよいでしょう。一番値段が高いのが桟敷席で一等席の両サイド、舞台に対して90度近い角度にあるボックス席です。観づらいと感じる人もいるかも知れませんが、他のお客さんの注目が集まったり、お茶の提供があったりと特別感を味わえるかも。

    幕見席は当日券のみ発売されることになっていて、お芝居の1演目あたりおよそ1,000円前後と安価。通常公演では椅子席約90名、立ち見約60名、合わせて約150名の定員で、定員数に達すると「札止め」となり、「売り切れ」の紙が貼り出されます。

    気が向いた時にふらっと入るには便利な幕見席ですが、人気のある公演はあっという間に札止めになるので注意が必要。例えば最近では、中村勘九郎さんのご子息である中村勘太郎くん、中村長三郎くんが歌舞伎座デビューした今年2月の公演では前売りチケットはすべて売り切れていたため、千秋楽の幕見席には朝7時から並ぶ人がいたそうです。夜の部の開演が16時で、切符の売り出しが14時ですから、7時間並んで切符を買い、そこからさらに2時間待って入場するという。芝居が始まる頃には眠くなってしまいそうですね。

  • 歌舞伎を見るときの「ルール」や「ドレスコード」は?

    これと言った"厳格なルール"はありません。おかしかったら声を出して笑ってかまいませんし、泣けるときは思う存分泣いていい。特に若手の役者さんたちは、客席からのダイレクトなリアクションや熱気を求めているように思います。
    マナーは映画館のそれとほぼ一緒。つまり「おしゃべりしない」「前の椅子を蹴らない」「携帯は電源オフ」といったところです。飲食も自由ですが、やはりにおいの強いものや、食べるときに音が出るものは遠慮しましょう。
    ドレスコードは特にありません。私はいつも同行者に、「大切な人と食事に行くときの格好で行けば、間違いないですよ」と言っています。清潔感があってカジュアル過ぎず、ちょっと良いレストランに入っても恥ずかしくない、そんな服装であればまったく問題ありません。

  • 内容を理解できるか不安なのだけど…

    ちょっと早めに行ってプログラムを購入し、「あらすじ」を読んでから鑑賞することは必須です。初見で物語の流れを摑むのは、難しいかも知れません。しかも、前提条件などなくいきなり本筋から始まることもあります。そこが歌舞伎の厄介なところなんです。例えるなら、世界的に有名なシリーズもののSF映画を途中から見始めるようなもの。「え、この人は誰? あの人とはどんな関係なの?」って思っているうちに、話はどんどん進んでしまいます。筋を追いかけるので精一杯では、誰がどんな芝居をしていたか分からないですよね。
    よく映画だと「ネタバレ厳禁」で、前情報ゼロで観た方が楽しめるものもありますが、歌舞伎の場合は「あらすじ」を知っていてマイナスになることはほとんどありません。くれぐれも「あらすじ」は読んでおきましょう。

  • 鑑賞以外のオススメ、楽しみ方は?

    少し早く行って幕あいをエンジョイするのも歌舞伎の楽しみです。私は歌舞伎座に行くと必ず3階に売り場がある「めでたい焼き」を買って食べています。たい焼きの中に紅白の小さなお餅が入っていて、これがたいへんな人気で行列ができるんです。なので、友人を連れて行くと、歌舞伎座に着いたらまずは「めでたい焼き」を買いに行くよう話しています。
    また、1階の喫茶室「檜」で売っている「リンゴのタルト」も時々食べに行きますね。
    売店コーナーも充実しているので、覗くと楽しいですよ。手ぬぐいなど、いかにも"和"なグッズが置いてある一方で、「え、こんなコラボもしているの?」というキャラクターグッズも売っています。また、舞台の様子を撮影したスチール写真も、公演期間の後半になると売り出されます。私たち一般人はもちろん舞台を撮影することができませんから、記念に買って帰るのもオススメ。あとで見て思い出すのも楽しいですよね。
    ※幕あい=一つの演目が終わり、次の演目が始まるまでの休憩時間

  • オススメの演目は?

    歴史好きの人なら、『仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)』や『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』など、重厚な手応えのある"時代物"がオススメです。歴史が分かっていると、史実に対してどんなフィクションを混ぜているのかも分かって楽しいと思います。男と男の義理人情の世界が描かれているので、ビジネスマンの方は見ると身につまされるところがあるかもしれません。
    庶民の生活を描いたお話なら、『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』や『魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)』(『新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)』)など、河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)の作品が入りやすいし面白いと思います。庶民の使っていた言葉なので、比較的分かりやすいんです。
    もし分からない単語があっても、そこにとらわれないで大枠を楽しむようにするのがコツ。普段、我々の会話でも、相手の言っていることを一語一句理解できなくても、会話の流れで意味が通じることってありますよね。お芝居も同じだと思うんです。

堀越さんが語る、歌舞伎の魅力

例えばクラシック音楽は、同じ交響曲でも指揮者が変わると全く違って聴こえることがありますよね。歌舞伎でも同じ演目を、中村吉右衛門さんがやるのと、片岡仁左衛門さん、松本幸四郎さんがやるのとでは、それぞれ全く別物のお芝居になる。そこに醍醐味があるのだと思います。
それと、歌舞伎を見ていて思うのは、400年前に作られた物語にも関わらず、今とあまり変わっていないということ。昔から私たちは泣いたり笑ったりしていたし、四季折々の美しさに想いを馳せたり、義理や人情を重んじたりしていた。そうした感情の機微や人と人との接し方など、通じるものがたくさんあるんですね。現代に生きる私たちは、つい歴史から切り離された存在だと思ってしまいがちですが、歌舞伎というお芝居を通して、当時の生活がありありと浮かび上がってくると、“歴史の連続性”を強く感じられる。もう何十回、何百回と見ている演目なのに、つい泣いてしまうのは、そんな魅力が歌舞伎にはあるからなのだと思っています。

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